結界
凡夫の母親の在所は三重の山奥です。松阪の駅から単線ディーゼルに乗り換えて西北西にグリグリ行った先にあります(※現在はバスの振り替え輸送)。数年前公開の長澤まさみ主演の映画のロケがおこなわれたんだそうです。林業推進映画らしいですけど。あまり流行らんかったですけど。長澤まさみはきらいじゃないですけど。
小学生の頃の凡夫少年は夏休みごとにこの場所への帰省を楽しみにしてたのですが、それでも一つだけ参加するのに気の進まないイベントがありました。お墓参りです。当時この地はまだ土葬の風習があったのです。お弔いがあると、棺桶担いだ行列がお坊さん先頭に鈴と太鼓で♩チリーンチリーン、ドーン って鳴らしながら墓地へ行進します。で、その墓地のお山ってのが、ずっと以前の伊勢湾台風で地滑りを起こして以来、ずっとそのままだったのですね。ですので、目当てのお墓にたどり着く道すがら、足元にゴロゴロとしゃれこうべが転がっておるわけですよ。気を付けてみれば、あ、これ大腿骨。あ、これ骨盤っとわかってしまうわけです。百科事典見るの大好きでしたからね凡夫少年は。焼き場でお骨拾うより全然リアルにわかります。 で、わざと墓参りに同行する伯父、叔父は、日暮れ時を狙って墓参りに連れて行こうとするわけです。最悪です。
そんなこんなで「八知のお墓怖いなー」ってなってるとこに、ある年、母の母つまりはババが川崎に遊びに来たのかな? なんでか来ました。当時住んでいた社宅の庭の隅には、時節柄、彼岸花がひと塊咲いておりました。秋だったんですねぇ。ババと話をしておりますと、ババが言うわけです。「おまえはあの八知の墓山が怖いのか? 墓山の周りには切れ目なく彼岸花が植わっておろぅ。あれは結界である。あの花が咲く限り、墓の中に住まうものはこちらへは出てこられないのである」的なことをいうわけですよ。そのとき思ったのは、「やっぱなんかいるんじゃん。彼岸花咲いてないときだったらだめじゃん」でした。あれから数十年、そこらで見かける彼岸花っていう彼岸花に対して、ちゃんと仕事しよるんかいね⁉ みたいな不信感があります。 今年もそろそろ彼岸花パワーが全開のようですので、しっかり仕事してほしいです。
こちらの結界破りの鍵は、お家へのご招待。吸血鬼関係のセオリー通りやってはります。すっごく好きな作家さんですので、一度特集棚やってみたいです。