ご挨拶
みなさまごきげんよう、書肆凡夫堂でございます。 定年再雇用のエンジニアという表家業のかたわらで新刊・古書の販売をおこなっています。店名に名付けた「凡夫」と申しますのは仏教用語でございまして、その意味をAIに問いますと 「仏の教えを十分に理解せず、煩悩にまみれ、迷いの世界で生きる平凡で愚かな人間」 と教えてくれます。いい歳してわが身振り返らず本屋さん始めようなどと言い始める自分を常に戒めるべく、この言葉を入れました。
「大きくなったら何になりたい?」小さいころからよく聞かれたものです。いつもけっこう本気で考えて答えていたので、一部は今でも覚えています。チンドン屋さん、国際プロレス所属のレスラー、戦場カメラマン、天才外科医、南極越冬隊員、バンドマン等々。その時々でなりたいものはさまざまに変わりましたが、お店屋さんになりたいと答えたことは一度もありませんでした。父方の曽祖父が十三界隈でビジネス旅館をかまえていたとか、叔父が豊橋で文具店を出していたとか、なんならその店は従弟が継いでいるとか、環境としては他の人より少しはあったのかもしれませんが、自分が商いにかかわることは想像したことすらなかったです。 とどのつまりは バンドマンになるべ! と、東京へ出るための理由づくりで当時の学力で入れた在京の工学系の学校に進学し、当然のごとくバンドマンなぞにはなれず、 ”みんなが行くから” 大学院に進学し、そこで奨学金を出してくれた企業に「お金が返せないから」という理由でそのまま就職しました。50過ぎて一回会社変わってますけど、まさかの会社員生活37年です。あと3年で前期高齢者です。
2年前の3月に定年を迎えました。その前年の暮れ、再雇用希望の有無を問われて思い出しました。
「大きくなったら何になりたい?」
ぱっと思ったのが「本屋さんになりたい」でした。プロレスラーになりたかった小学生のころから、本を読むこともそうでしたが、本を選んでいるときの時間と場所がとても好きでした。ああいう時間を人に与えられる場所ならできれば一度自分で作ってみたい。
永らく、趣味と仕事とは絶対に分けなきゃいけないものと思い込んでいました。なぜかはわかりません。考えが変わるに至った大きなきっかけは知り合いの自転車屋さんからもらっています。とにかく自転車が好きで仕方のない自転車屋さんでした。でした というのはわたくしが店主に不義理をして足が遠のいてしまったからで、亡くなったりしちゃったわけではないです、あしからず。 自転車が大好きという気持ち、自転車にからめてあんなことやったら面白いだろこんなことも面白いだろと言葉の端からあふれるアイデア、日々のお商売に潜むリスクと不安に思う気持ち、包み隠さず全部教えてくれる人でした。この人への共感が自分の考えに大きく影響してます。実際いつだったか彼と呑んだときに、そのうち本屋やりたいって漏らしたような気もします。
となると話の流れ的には「じゃったら、なんで再雇用なん?」ってなりますよね。自分でも話の収まりがつかなくて困ってます(笑)。まだ役に立ってますよとおっしゃっていただけるうちはですね、お応えしたいな という感じです。これはこれで今のわたくしのアイデンティティです。本屋さん計画のこともご説明さしあげてご理解いただいたうえでの再雇用となっております。
ですので当面の目標は個人店舗出店です。果たして二兎は得られるか? いつできるのかもどこにできるのかも全く予測不能ですが、自転車店主の彼のように、熱い思いを持ってされど趣きは淡々とやっていけたらな と思います。
令和7年末吉日 凡夫