旅のお供

 わたくし表家業では(定年再雇用の)エンジニアとして一企業にお勤めしておりますが、このお仕事やたらと出張が多いです。過去最多では年の出勤日の2/3が出張勤務だった年度などもございまして、こうなりますと出張先のホテルで目を覚ました時に、自分が今いるのどこ? としばらくの間不明な状態になったり、なかなか難儀な思いをいたします。いやこれマジで不安でいやーな感じになるんですってば。 そしてこのような生活になりますと、おのずと移動の時間というものが日常に占める割合が増えてまいりまして、この時間の使い方というのがこれまたなかなかに難しいものです。

 わたくしはいささか乗り物酔いしやすい体質であるのと、自意識過剰であるところがあいまって、車内での飲食というものを極端に避ける傾向があります。 では代わりに寝て過ごそうかといっても、乗り過ごすことを極度に警戒する小心者ですので、それもできません。飛行機は乗り過ごす心配はありませんが、乱気流とか着陸のショックで ビクッ! と起こされるのがすごく嫌なのでやはり寝ないようにしています。「ビール飲んで弁当食ってちょっとうたた寝してりゃぁ、東京‐広島なんてあっという間よ」なんておっしゃる “出張道五段” みたいな方も中にはいらっしゃいますが、自分には無理です。

 仕事してますよ という方もなかにはいらっしゃいます。最近は新幹線の7号車なんかリモート会議までやってもいいそうで(実際に一度つなげてみたけど、「凡夫さん?なんか電波死んでますね ww」って言われておしまいでした)。でもですね、仮に横からPCの画面のぞかれて全然大丈夫な仕事の中身って、およそどうでもいい作業に限られるんですよね。どうでもいいメールへの返信とか、出張精算書いたりとか。実験に使う資材をモノタロウで発注する作業なんかもいいですね。ベアリング一個買うだけなのに電波悪いからすっごく時間潰れる(笑)。つまり生産性の高いことは一切できないです。 昔いた出張道五段の先輩が “新幹線の中言うたらゴルゴかスポーツ新聞読んどるぐらいがちょうどええんよ!“ とおっしゃっていたのが思い出されます。ビールと弁当とゴルゴとうたた寝。これは楽しそうな出張ですね。これなら年の2/3でもいいかも(いやだ)。

 というわけで出張のカバンの中にはかならず本を入れていくわけです。長崎本線とか土讃線とかは揺れすぎで無理ですが、それ以外はたいてい読みながら乗っていかれます。その分出発前の本選びは慎重です。行商ではないので何冊も持っては歩けません。かといってその一冊に途中で飽きてしまうようだと困ります。確実に読める(時間が潰せる)やつをごく少数です。サイズも大事。薄めの文庫本は携行には良いのですが、鞄の中であっちこっちしているうちにページが折れ曲がったりしていやな気分になる可能性が高いです。意外と良いのは絵本だったりしますが、あまり時間が持ちません。最近気に入ってるのは歌集です。穂村弘さんのとか。版も小さめのが多いし。 んで、読む分にはすごく面白いんだけど絶対持ってかないよね ってのがこちら↓ 重すぎです。

この方たち、どの作品もこのサイズなんですよね。


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UL